過食嘔吐に悩む人がいたら
今、この記事を読んでいるあなたは、もしかしたら食べては吐くという行為を繰り返してしまい、「もうやめたいのにやめられない」と苦しんでいるかもしれません。
私がまさにずーっとその繰り返しでした。
抑えられない衝動で食べてしまい「また今日も吐いてしまった」と自分を責める日々は、誰にも言えない孤独を抱え、心も体もボロボロでした。
今、私はあの地獄のような日々から抜け出すことができました。完全に「治った」とは言えないかもしれませんが、過食嘔吐に支配されない人生を取り戻せました。
この記事では、元JAL客室乗務員として30年間勤務した私が、過食嘔吐を経験し、そこから抜け出すまでの道のりを書いていきます。
同じ悩みを持つ人や親である人に、「必ず抜け出せ時がある」と伝えたいです。
私が過食嘔吐を始めたきっかけ
「ふっくら可愛い」——それが学生時代の私でした。
丸顔でぽっちゃり体型。友達からは「癒し系」「天然」と言われ、自分の体型にそれほどコンプレックスはありませんでした。食べることが大好きで、部活の後にラーメンやドーナッツを食べに行く事が多く高校生になってからは食事は外食ばかりでした。
そんな私が変わったのは、憧れのJAL客室乗務員を目指し始めてからです。
就職活動が本格化した短大の2年生になった時。CAになるという夢を実現するために、私は「痩せなければ」と決意しました。当時の私は身長160cm、体重58kg。決して太っているわけではありませんでしたが、CA選考では外見も重要な要素。周りの就活仲間はみんなスリムで、華やかでした。
「私もあんな風にならなきゃ」
そう思った私は、厳しい食事制限を始めました。朝はリンゴ、昼はコンビニ食、夜は食べるけど吐き出すことで7キロ痩せました。周りからは「綺麗になったね」と褒められ、自分でも鏡を見るのが楽しくなり、就活用のスーツがスルッと入る感覚に喜んでいました。
でも、我慢はずっと蓄積されていたんだと思います。
何ヶ月も食事制限をしていたことで、体が我慢の限界で、ある日、家に帰ってから大量のお菓子、パン、アイスクリーム、部屋で一を部屋で一気に食べました。
「あぁ、せっかく痩せたのに…太る…」
その恐怖が私を支配しました。そして、夕食を吐き出してたら痩せられたという成功体験みたいな誤解が頭をよぎったのです。
トイレに駆け込み、喉に指を突っ込みました。最初は上手く吐けませんでしたが、大量の水を飲むことで、すんなりと吐けるようになりました。
これが、私の過食嘔吐の始まりでした。
最初は「今日だけ」「これで最後」と思っていました。でも、一度始めると止められなくなり食べては吐く、食べては吐く。それが私の日常になっていったのです。2日一度だった過食嘔吐が毎日になり、休みの日には食べては吐くを1日中繰り返し、心も体もくたくたになっていました。
過食嘔吐とは?症状と原因
過食嘔吐の定義
過食嘔吐は、医学的には「神経性過食症(bulimia nervosa)」と呼ばれる摂食障害の一種です。
主な特徴
– 短時間に大量の食べ物を食べる(過食)
– 体重増加を防ぐために意図的に嘔吐する
– 過食と嘔吐を繰り返す
– 自己評価が体型や体重に強く影響される
過食嘔吐は、拒食症とは異なり、体重が正常範囲内であることも多く、周囲から気づかれにくいのが特徴です。私も、周りには「健康的に痩せた」と思われていました。そして少しでも体重が増えると生きることさえ嫌になり、自分の評価が体重に支配されていくのです。
主な原因
過食嘔吐の原因は一つではありません。複数の要因が複雑に絡み合って発症します。
1. 過度なダイエット
極端な食事制限は、身体と心に強いストレスをかけます。我慢の反動で過食が起こり、「太りたくない」という恐怖から嘔吐へとつながります。
2. 完璧主義な性格
「こうあるべき」という理想が高く、自分に厳しい人ほど摂食障害になりやすいと言われています。私も「CAになりたいなら、完璧な外見でいなければ」と自分を追い込んでいました。
3. ストレスや不安
人間関係、仕事、将来への不安など、様々なストレスが過食の引き金になります。食べることで一時的に気持ちが紛れますが、その後の罪悪感から嘔吐してしまうのです。
4. 自己肯定感の低さ
「今のままの自分では全然ダメ」「痩せていなければ美しくない」という思い込みが、過食嘔吐を引き起こします。
5. 社会的プレッシャー
「痩せている=美しい」という社会の価値観、SNSでのキラキラした投稿、周囲からの外見への評価などが、過食嘔吐を悪化させることがあります。
地獄のような日々
過食嘔吐は、想像以上に心と身体を蝕みます。
CAの採用試験に合格し、念願のJALに入社できた私。でも、喜びもつかの間、過食嘔吐は止まりませんでした。入社当時は寮生活だったので、一人で隠れてトイレで嘔吐をしていました。
身体の変化
顔のむくみ
毎朝鏡を見ると、顔がパンパンに腫れていました。唾液腺が腫れ、エラが張ったような顔になりました。
歯のトラブル
胃酸で歯が溶け、歯が明らかに小さくなりエナメル質が溶けて黄色になりました。歯医者に行くたび、「歯のエナメル質が異常に薄いですね」と言われていましたが、子供の保育園で「〇〇ちゃんのお母さん、歯が汚い」と言われるまで自覚がありませんでした。
喉の痛み
嘔吐を繰り返すうちに喉が傷つき、常にヒリヒリと痛みました。あまりに指を突っ込みすぎて、出血することが多く、口腔内には口内炎ができることも多くありました。
手の傷
喉に指を突っ込むため、手の甲に吐きだこができると言われていますが、私は、大量の水で押し出すので、手に吐きだこはできませんでした。
貧血
栄養が偏り、体調が優れない事が多く、疲れやすい体質になりました。
心の変化
身体以上に辛かったのは、心の変化でした。
自己嫌悪の連鎖
吐くたびに「私は何をやっているんだろう」「また今日も吐いてしまった」と自分を責めました。でも、次の日には同じことを繰り返してしまう。そんな自分が大嫌いでした。
孤独感
過食嘔吐は恥ずべき行為だという思い込み医が強く誰にも相談できず、「こんな醜い自分を知られたくない」と人との距離を置くようになりました。家族にも友達にも相談できず一人で悩んでいました。
食べ物への執着
常に食べ物のことを考えていました。仕事中も「今日はどこで買い出ししよう」「安いお店で大量に買えるのはどこだろう」という考えが頭から離れませんでした。
経済的負担
過食のための食費が月に10万円を超えることもありました。生活費のほとんどを食費が占めていました。だから見切り品や少しでも安いものを買う習慣が身についてしまいました。
ある日の記録
フライトが終わった夜、疲れ果てて帰宅した私は、スーパーで大量の食料を買い込みました。
– おにぎり8個
– 菓子パン6個
– お弁当2つ
– ポテトチップス2袋
– アイスクリーム箱買い
– 大量のチョコレート
部屋で制服を脱ぎ捨て、床に座り込んで食べ始めました。味なんてわかりません。ただ、口に詰め込み、飲み込む。30分ほどで全て食べ終わりました。涙を流しながら食べることも多く、こめかみが痛くなるほど咀嚼していました。
お腹がパンパンに張り、喉からあふれかえるほど食べると、急いで「吐かなきゃ…吐かなきゃ太る…」とトイレに駆け込み、吐きました。1時間近くトイレにこもり、全て吐き出すまで止められませんでした。胃が空っぽになっているか見えるわけではないので黄色の胃液しかでなくなるまで吐いていました。吐き終わった後は、便器にもたれかかり、いつも疲れ切っていました。
「もう疲れた…いつ死んでもいい…何のために生きてるかわからない」
これが、17年間続いた私の日常でした。
抜け出すために試した5つのこと
では、私はどうやってこの地獄から抜け出せたのか?
正直に言えば、簡単ではありませんでした。何度も失敗し、何度も挫折しました。でも、諦めずに試行錯誤を続けた結果、少しずつ光が見えてきたのです。
1. ヨガを始めた
きっかけは、SNSでした。
「ホットヨガをやると冷え性に効果がある」というコメントを見て
半信半疑で参加したホッとでした。最初はその場所へ行くことさえ、着替えることさえも面倒でした。ポーズもうまく取れませんでした。でも、レッスンの最後の呼吸を整える時間があり仰向けに寝転がり、静かに呼吸をしているとき、久しぶりに「空気を吸い込んだ」感覚を味わいました。
ヨガを続けるうちに、少しずつ変化が訪れました。
身体の感覚が戻ってきた
冷え性だった手足足先に血が巡る感覚があり、感覚が麻痺していた私が、自分の身体の声を聞けるようになりました。
自分を褒めることができた
ヨガに通えた日は合格と自分を褒めることができました。たった45分のレッスンでも私にとっては大きな成果だったんです。
過食の回数が減った
出かけることで一人で過食嘔吐する時間が減り、深い呼吸をすることで、自律神経が整っているような気持ちがしました。
ヨガというキッカケは、私に呼吸の大切さを教えてくれました。
2. 心療内科へ行った
ヨガで心が少し軽くなったものの、過食嘔吐は完全には止まりませんでした。
「もう一人では限界かもしれない」
そう思った私は、勇気を出して心療内科で、自分の恥ずべき行為を打ち明けました。
今まで誰にも言えなかったこと、隠してきたこと、全てを話しました。医師は、若い女性に多い病気なのに30代40代で摂食障害は、最近増えてきたみたいだねと言われました。他にも同じような症状の人がいることがわかりほっとしました。
3. 摂食障害の本
過食嘔吐の背景にある「完璧主義」「自己否定」「承認欲求」などの心理パターンを一つずつ紐解いていきました。
認知行動療法
歪んだ思考パターンを修正するといいますが、私はうまくいきませんでした。むしろこの方法は一体何をしたいんだろうと不思議でした。
過食の引き金を特定し、対処法を学び感情日記をつけるといいと言われましたができませんでした。
4. 自分を許す
これが、最も難しく、そして最も大切なことでした。48才でくも膜下出血で倒れ、50才で大腸がんステージⅢとなり、やっと自分を許すことができました。
「自分を許す」
私は長い間、自分を責め続けていました。
「なんで私はこんなにバカなんだろう」
「生きてる意味がない」
「ダメな娘でダメな母親でダメなCAだ」とずっと自分を責めていました。
過食嘔吐は、「弱さ」ではなく、心が発している「SOS」
私は、完璧であろうとするあまり、自分を追い込んでいました。「ふっくら可愛い自分」を否定し、「痩せて完璧な自分」になろうとしていました。結婚後は、良い妻を演じきれない自分を責め、出産後は、良い母親を演じきれない自分を責めました。そしてCAとしても中途半端で昇格もできずずっと現場で飛んでいました。
でも、本当に大切なのは「ありのままの自分を受け入れること」でした。
– 良いお母さんでなくてもいい
– 昇格できなくても自分のせいじゃない
– 人に批判されても生きる意味はある
そう思えるようになったとき、不思議なことに、ぽっこりしたお腹や、太った後ろ姿を受け入れることができました。
自分を許すことは、自分を甘やかすことではなく、自分を大切にすること
過食嘔吐から抜け出すためには、時間がかかります。私は50代になってやっと楽になれました。それは過食する体力もなくなり、嘔吐する気力も体力もないという年齢的なこともありますが、自分に期待しすぎない自分でいることができるようになったからです。
自分を諦めるのは、悔しく悲しいことで残念ですが、そのかわり自由が得られます。心が自由になれることは、生きることが楽しくなります。摂食障害のど真ん中にいると人生は絶望の連続だと思います。もう自分を諦めて許してあげたいです。よく頑張ってきたと……
必ず抜け出せる日が来る
私は今、54才です。JALを30年間勤め上げ、病気で退職しましたが、今は投資で経済的自由を手に入れ、ブログやYouTubeで情報発信をしています。
過食嘔吐に苦しんだあの日々は、決して無駄ではありませんでした。あの経験があったからこそ、今の私があります。
-同じ悩みを持つ人は、思っている以上にたくさんいます
– 過食嘔吐は、あなたが悪いわけではないってことを知ってください。
– 時間はかかるかもしれませんが、必ず抜け出せる日が来ます。
– 私みたいに治らない病気になったら人生がかわいそうです。
人生は、何歳からでもやり直せます。
私は48才から新しい人生を始めました。あなたにも、必ず新しい人生が始まります。
諦めないでください。私たちの未来は明るいです。
この記事を書いた人
元JAL客室乗務員(30年勤務)。19才から35才まで摂食障害(過食嘔吐)を経験。ヨガと心療内科で克服。現在は投資で経済的自由を実現し、ブログ・YouTubeで「何歳からでも人生はやり直せる」をテーマに情報発信中。
※この記事は個人の体験に基づくものであり、医学的アドバイスではありません。摂食障害は専門的な治療が必要な疾患です。症状が重い場合は、必ず医療機関を受診してください。



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